”秋田清酒株式会社”
  「インターネットはまだ夜明け前。でもバスに乗り遅れるなではないが、本当
 にインターネット時代を迎えてからホームページを開設したって遅い。それまで
 に ホームページ運営のノウハウとデーターの蓄積が大事じゃないかと思ったの
 です。」

 「出羽鶴」「刈穂」で知られる仙北町戸地谷の酒造メーカー「秋田清酒株式会社」
 業務部の伊藤道夫課長(34)はそう言って目を輝かせた。伊藤辰郎社長から「当
 社でもホームページを持ってみないか」と企画が出されたのは大曲市に「おばこ
 ネット」が誕生した翌年の1997年9月。専門業者に外注も検討したが、当時
 はホームページを作ってもらうだけで50万円が相場。パソコンを使いこなして
 10数年になる伊藤さんは「そんな大金を投入するぐらいなら自分で作ろう」と
 専門書を読みあさり、2ケ月かけて11月に「雪蔵銘醸『出羽鶴』伝統の銘酒
 『刈穂』秋田清酒株式会社」のホームページを立ち上げた。
  伊藤社長も「大変だろうがこれからは地域からの情報発信も大事だ。頑張って
 ほしい」と期待を込めてホームページの完成を祝った。その内容は伊藤さん個人
 でやったとは思えないほど豊富だ。内容は酒蔵での「初しぼり」が始まった時の
 様子や季節の話題、季節商品の案内などをお知らせする「新着情報」から、お酒
 に関するあれこれを語る「酒のらくがき帳」「蔵元あいさつ」、そして清酒「出
 羽鶴」「刈穂」の蔵元と「やまとしずく」の紹介のページ、さらにはお酒関係の
 ホームページのリンク集と多彩。

  「業務の合間を見つけての更新だけに、最初は10日に1回を目標にしてたが
 忙しいと月1回の更新と言うことも」と頭をかくが、ホームページを開設して以
 来2年以上の月日を重ねているだけにその情報の蓄積量は豊富で充実している。
 ホームページを見たと言う人からの問い合わせや励ましのメールも来る。横浜の
 焼鳥屋さんからは「刈穂の『番外品+20』という幻の銘酒を飲む機会を得たが、
 大変すばらしいお酒で感動しました。どこで市販されているか、また市販が不可
 能であれば予約などで手に入るでしょうか」と言った問い合わせも。またアメリ
 カに住んでいる女性からは「ヤフーで御社のページを見つけてびっくりしました。
 日本にいるときはおいしく頂いていたのでとても懐かしくそのことを思い出しま
 した。こちらではあまり飲むお酒の種類はなく、日本で言う料理酒を平気でレス
 トランでSAKEとして出されていて、それを飲んでいる外国人の皆さんを見る
 ともっとおいしいものがきちんとあるのになぁと残念に思います。どうぞこの常
 識をいつかは改めて下さい。陰ながら応援してます」と言った励ましのメールも
 届いている。
  伊藤さんは「札幌の方からも出羽鶴を手にしたいが、札幌市内で売っているか
 という問い合わせがあり、お店を紹介してやりました。お客さまから来たメール
 にはすぐ返事を書いてつながりを大事にするよう心がけてます」と話す。そして
 「本格的なインターネットの時代に入るとお酒を飲んでくれる方々から酒の出来
 具合などを直接、聞けるようになるだけにお客さんの立場に立った酒造りも出来
 る」とも話す。
  また、「酒の小売店も大型店の進出でこのごろ元気を失いがちだが、若手の酒
 屋さんは自分の店のホームページを持って意欲的に酒の販売に取り組んでいる方
 もいる。そのような人たちと活動のネットワークを作って情報交換し、より幅広
 くホームページを見てもらえるよう努力を重ねたい」と意欲を燃やす。

  伊藤社長もインターネットの活用には前向きで、最近は自らパソコン教室に通
 うなど勉強にも取り組んでいる。「これからはやはり情報の時代。ホームページ
 を持つだけで地域からも情報発信ができる。その道具を使わない手はない。お酒
 に関してもその個性や味、コクの深さ、この酒ならどんな料理に合うかなどお客
 さんに伝えたい情報はいっぱいある。インターネットを通じて酒の小売店の応援、
 消費者との交流を深めるようにしたい」と話す。

  秋田清酒株式会社は1972年、出羽鶴酒造株式会社(南外村)と刈穂酒造株
 式会社(神岡町)との共同出資で現在地にビン詰工場を設立して誕生した。出羽
 鶴は慶応元年の創業。刈穂は13年(大正2年)、出羽鶴の兄弟会社として設立
 された。

  酒にはそれぞれ個性があって「出羽鶴」の仕込み水は硬度1.0の極軟水で酒
 質の特徴は「おだやかでまろみを帯びた味わい」で喜ばれ、「刈穂」は雄物川の
 砂礫層から伏流した地下水が仕込み水で、県内では珍しい中硬水のため「清冽で
 キレのある感じ」が特徴。「すっきりした味わい」が楽しめると安定した人気を
 持っている。

  商品の出荷は年間8000〜9000石で1升ビンにしたら80万から90万
 本。北海道から沖縄まで全国を市場とし、その消費の6割は県内だという。年商
 は14億円。87年からはアメリカへも商品を輸出、好評を得ている。98年か
 らは香港にも輸出している。従業員数は50人。
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