”栗林酒造店”
清酒「春霞」で知られる六郷町米町の合名会社「栗林酒造店」(栗林啓亮
社長) は明治7年(1874年)の創業だ。奥羽山脈に降った雨と雪。そ
れが地下にしみ込み、扇状敷に広がった町に「清水」として美しい水が湧き
出し、「名水100選」にも選ばれた豊富なその水を仕込み水にし、清酒
「春霞」は育まれてきた。
同社専務の栗林直章さん(32)は3年前、「ホームページを持ったら宣
伝費をかけなくても『春霞』の名を広げられる可能性がある」と期待して独
自にホームページを立ち上げた。「春霞の人と酒」「栗林の仕込み水」「純
米吟醸“深山春霞”」「蔵の風景」「春霞商品一覧」「蔵日記」などのペー
ジを作り、仕事の合間を見てはページをコツコツと更新してきた。アクセス
数は8000件を超えた。毎日、更新しているわけでもないだけに1企業の
ホームページとしては標準と言えるだろう。
「でもひょんな所で見知らぬ人から『見てますよ』と言われ、人と人のつ
ながりが出来て嬉しくなります。広告費をかけなくても本当に微力ですが、
『春霞』の名がじわじわと広がっているような、そうした喜びはあります。
東京の方からメールで『どこで買えるのか』と言った問い合わせや海外に住
んでいる町出身の方から『懐かしい思い出をありがとう』と感謝の言葉を頂
いたり」と栗林さんはホームページ効果を話す。
「まあ。ホームページでお酒の売り上げを伸ばそうと期待したわけではな
く、少しでもその名前を広げたいという夢で始めたのですから」とも。更新
は主に蔵日記などを中心に月1回程度。一番、辛いのは「文章を書き慣れて
ないため自分で伝えたいことをどう形にするかだ」という。「好きなエッセー
作家の本を読んだりして訓練はしているつもりですが中々・・・」とはにか
んだ。
それでも少しでも変化があればIndex面でNEWSとして報告してい
る。この夏には「大吟醸」が全国新酒鑑評会で「金賞」を受賞し、その酒が
出荷されたこと、そして清水に棲息している「ハリザッコ」、学名「イバラ
トミヨ」と町の清水の保全に役立ちたいと売上金の一部を町に寄付するのを
狙いに売り出した純米吟醸「ハリザッコみつけた」をNEWSとして伝えて
いる。さらに10月には超限定品「大吟醸『土蔵熟酒』」の出荷、そして秋
田市の居酒屋で開かれた「第1回蔵元交流会」で「春霞」も選ばれ、栗林さ
んと杜氏の亀山精司さん(70)とが一緒に参加してファンと交流を深めた
ことなどをほのぼのとした文で書き綴っている。
「ほとんど地元とお隣の千畑町、仙南村がお客さんの中心であり、東京と、
北海道に一部出荷している程度の酒屋ですから」と栗林さんは言い「ですか
ら、ホームページがあるからと言っても、無理せずチョコチョコと楽しみな
がら維持していきたい」とマイペース派だ。
それでもページは中々の見どころもある。「春霞の人と酒」では杜氏の亀
山さんを紹介し、蔵で働く人たちへの愛着を感じさせる。「蔵の風景」では
精米から洗米、蒸し、(こうじ)作り、酒母造り醪(もろみ)へと酒造りの
過程を写真と栗林さんらしい文で分かりやすく紹介している。酒の出荷量は
年間1000石と言うから1升ビンにして10万本ほど。「小さな蔵だが、
これからもホームページを活用してチョコチョコと春霞ニュースを送り届け
たい。そして一人でも目を通してくれた方がいたら、その一人ひとりとのお
付き合いを大事にしていきたい」。栗林さんは静かな口調でインターネット
との付き合いの喜びを語った。
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