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1.地鎮祭

──地鎮祭というと神社に依頼する神道式だと思われている方が多いのではないでしょうか?

 確かに圧倒的に神道式が多いのも事実ですが、私がかかわった地鎮祭でも神道式の他に仏教式では日蓮宗や天台宗で行いましたし、キリスト教式や新興宗教の方式も経験させていただきました。それぞれ式次第はまったく異なり、戸惑うこともありました。

 しかし、これらの経験から地鎮祭に共通していることは「豊かな太陽の恵み、自然の営み溢れる大地の一部に、建物を建てて半永久的に専有させていただくことを、地を治めている神仏等の許しを請うための儀式。併せてこの住まいと住む家族を天変地変から守っていただき、末永く平和に暮らしていけることを祈願する儀式」と言うことだと思います。

 歴史的には「生け贄を捧げる」など怖い話もありますが、いずれにしても、八百八の神の土地のお陰様で豊かな恵みと生計を立てる糧としてきた大切な土地を一部お借りする儀式だと思います。

 この地鎮祭ですが、多くの方は初めて経験することですから、実際どのような手配や準備が必要なのか? 式次第は? 参加者は? 等々、多くの疑問点も生まれると思います。そこで、もっとも多く行われている神道式の疑問に思われる項目等をQ&A形式でまとめてみました。


●一般的な神道式の地鎮祭Q&A

Q1「神社と事前打ち合わせは誰がする?」
 神社への連絡は施主から電話等で行っていただきますが、その後の実際の打ち合わせは工務店(施工会社)にお任せするのが良いと思います。その理由は事前準備、式次第など精通している上に、神社により若干異なる部分を直接調整することでスムーズに進行できると思うからです。

Q2「お日柄は? 時間は?」
 一般に大安が良いとされているので、早めに決めておかないと神主さんの都合があります。また、大安以外でも先勝など可能としている日はあります。その他、易学では二十四節気、九星、干支、二十八宿などで決める方もおられます。

 時間としては午前中が一般的で、地鎮祭自体も現場での準備から儀式、片づけで1時間程度と思われます。

Q3「神主さんに伝えておく項目」
 祝詞奏上の関係で、建築現場名、建て主の名前、工事名、設計者名、施工業者名を事前に伝える必要があります。共有名義で建てる場合は、その旨と共有者の氏名を伝えておきます。

 注意点は必ず文面で渡すことです。また、特に名前などにはふりがなをつけておくことは忘れないでください。「日本人と言霊」ではないのですが、言葉が違っていればせっかくの願いも届かない?・・訳でも無いのですが、意外と忘れやすいことが多いのです。

Q4「当日準備するものは何?」
 *お施主にご用意頂くもの
 a 神酒 1升
 b 米 1〜2合
 c 塩 1合
 d 海のもの
 ・鯛か出世魚1尾頭付とスルメ、昆布、「益々」にかけて鱒にする場合もあります。
 ・夏季など腐れ防止で避ける場合、スルメ、昆布などで代用する場合もあります。
 e 山(野・地)のもの
 ・できるだけ季節のもの
      根野菜(大根、人参、さつまいも等)  ※葉っぱ付が原則
      野菜(カボチャ、ほうれん草)
      くだもの(リンゴ、みかん、柿、梨、ぶどう等)
 f 盃(さかづき・かわらけ)
 ・神社で用意する場合が多いので、確認するが一応紙コップを出席者の数人分用意すると良いでしょう。
 *神主がお持ちいただけるもの
    祭壇(式台)、榊(ひもろぎ用、おはらい用、玉串用)、三宝、御幣、縄(長さ四方角)
 *工務店にご用意してもらうもの
    笹竹4本、スコップ、鍬 1本、杭 4本、盛り砂
 *その他
 工務店ではカメラで記録を残しますが、お施主様もカメラやビデオを用意ください。一生に1回あるかないかでもありますし、家族の貴重な資料にもなります。

Q5「お迎えはどうするの?」
 お迎えは施主の場合もありますが、工務店に依頼することも多い他、神主自ら車で来られる場合もあります。なお、神主の用意するものの運搬は、普通セダンでもトランクと後部座席を使って積み込みすることは可能ですが、念のため事前に確認しておくことをお勧めします。

Q6「地鎮祭の進行」
 通常は、修祓(しゅうばつ)→降神の儀→献饌(けんせん)→祝詞奏上(のりとそうじょう)→四方祓い→鍬入れの儀→玉串奉奠(たまぐしほうてん)→撤饌(てっせん)→昇神の儀→直会(なおらい)と続きます。この内、施主自ら行わなくてはならないことのみ説明します。

 *鍬入れの儀
 砂の山に3回、「エイ」の声とともにシャベル(鍬)を入れ少し持ち上げるような動作をします。神職からシャベル(鍬)を受け取り、時計回りで回し右手は上、左手は下に持ち替えます。
声ははっきり元気良くが鉄則です。

 *玉串奉奠(たまぐしほうてん)
玉串を祭壇に供えます。玉串は神主様から両手でお礼をしながら受け取り時計回しに回して葉側を手前(枝元を神様側)にして供えます。そして、2度礼をして、2度手拍子して、1度拝む「二礼二拍手一拝」をします。

→この点は神主様が説明されることも多いのですが念のためお聞きした方が良いでしょう。

 *直会(なおらい)
お神酒を参列者全員でいただいて終了、この際、神主さんが一言お話しして「献杯(けんぱい)」と発声なさると思いますので続けて「献杯(けんぱい)!」と言います。
※「乾杯」ではありません。

Q7「費用はどのくらい?」
 *神主様へのお礼
 一般的には金額を明示してくれません。また、地域のよって相場のようなものもあります。東京での一般的な例で言うと2〜5万円と言ったところでしょうか? ただし、神主側でお供え物まで用意するということで金額を提示してくださる場合もあります。また、神主様自ら車で来られるときは別に「お車料」を用意します。(3千円から1万円程度)
熨斗袋の表は「御神饌料」「御初穂料」「御玉串料」と書きます。

 *工務店・職人さん等へのお礼
 Q4で工務店さんに用意してもらう笹竹等については基本的に実費を支払います。だいたい1万円前後でしょうか? 後でトラブルがないように事前に金額を確認しておいたほうが良いでしょう。

 また、職人さんへのご祝儀ですが、お気持ちの問題ですが、どちらかと言うと上棟式を行う予定があり、その際にご祝儀を出されるということで地鎮祭ではされない方が多いと思われます。

Q8「鎮め物」
 地鎮祭が終わりますと「鎮め物」を授かる場合があります。通常は建物の中央の基礎に鎮めることが多いので、工務店に預けて基礎工事の時に鎮めるようにお願いします。

Q9「雨天の場合どうする?」
 台風など強風雨の他、雨が確実に予想される場合は、日を改めて行うケースが多いと思われます。ただし、通常の小雨程度などではテント等を設営して行います。この場合、テントリース費用がかかることもありますので、工務店とは雨天時の対応は事前に確認しておいてください。

 なお、「当日早朝何時の、○×テレビの天気予報で判断し連絡し合う。」などと決めておくと良いと思います。

Q10「その他の注意点」
 神様にお供え物したものは、神主にお持ちいただきます。ただし、お祝いでいただいたお酒については、鳶や大工さんの頭領にお分けすることが多いと思います。

 ご近所の方からお祝い等をいただいた場合のお礼は、通常の頂き物の返礼(半返しなど地域慣習による)と同じと考えて良いと思います。


2.縄張り(地鎮祭が終わった後に行われる重要行事)

 地鎮祭が終わった後、施主様も設計者も工務店現場担当、さらに基礎屋さん(鳶職等)が一同に現場にそろっている貴重な時間に縄張りをします。

 この時に建物と敷地の位置関係の確認となる行為を、「縄張り」と言い大変重要なことなのです。従って地鎮祭をなされない場合でも、縄張りには施主立ち会いの上でおこなって、確認および承認していきます。

 さて、確認しなければならない敷地と建物の関係は、建ぺい率、容積率だけではありません。縄張りでは、主に隣地や道路との関係について確認します。

 余裕が十分ある敷地での新築は極まれですから、実際の敷地で設計上の建物位置に縄(現在はテープ)を張り、要求されている諸条件、規制について実際の現場で施主様・設計・工務店相互に確認し施主の承認を得るのです。

 実は設計時の敷地はというと、前回の建築確認申請書や測量図らしき敷地図などからの敷地情報がベースのことが多く、更地になったことで正確に確認することができるのです。 この段階で確認することは

 a.敷地が狭かったり、角度の違いで建物の一部を変更しなければならない場合
 b.逆に敷地が広かったり角度の関係で余裕がでた場合
 c.敷地内での高低差及び道路や隣家との高低差
 d.その他、隣家等の給排水管、地中障害、井戸があった? 等々

 縄張りによって生じたこれらの問題について、設計の立場として問題点の説明と解決策について三者で協議します。これらは事前にある程度予測されているのですが、敷地と建物の厳しい関係が多い昨今ですから更地の状態で改めて検討することが大切です。

 そして、ここで重要なことは、検討結果と対策については必ず確認承諾書を作成して保管しあうことです。 

 それでは具体的な問題点とはどのようなものでしょか。いくつか例を挙げます。

(1)敷地と建物にかかる制限

 図1は、各制限の概念図です。住居専用地域の場合、北側斜線、採光、道路斜線、高さ制限を受けます。その他、建築法規、関連条令、協定など地域によって制限がある場合もありますので、事前調査の結果を踏まえ現場で確認していきます。

 住宅にかかわる諸制限を一番厳しく受ける地域に、第1種住居専用地域の第1種低層住居専用地域、第1種高度地区の指定地域があります。しかし、逆に言えばこの地域は現在閑静な住宅地として良好な住環境が存在し、それをお互いに守るために厳しく制限されているということですから、むしろ良い環境に住んでいるということなのです。

 また、建築基準法は最低守るべき事柄を定めたものであると言うことから、制限以外でも、たとえば外壁の色などの選択でも周辺の住環境、景観も尊重する必要があることは言うまでもありません。


(2)制限には方向などがある

 ここで大切なことは制限、規制はそれぞれの正確な方向線上等にかかわってくると言うことです。北側斜線や有効採光では南北線上、道路斜線は道路と直角の線上、高さ制限は定められた法廷地面(GL)からと決められています。

 いままでかかわった中で正方形や長方形で真南側に6メートルの道路など理想的な敷地はほとんどなく、むしろ狭小敷地や変形敷地など条件が厳しいケースでの設計が多くあり、ぎりぎりの設計で、更地になって確認するまで心配していたことも多々ありました。

それはそれでいろいろ考えるのも設計者にとっては楽しいのも事実ですが・・・・。

(3)北側斜線の方向と注意点

 北側斜線を例に説明しますと図2のように一番厳しい第1種高度地区では、北側斜線(北側境界線上の線)から建物が出てはいけないことになります。その他の高度地区については図3に示しましたが、地区ごとに斜線と絶対高さについて定められています。

*敷地によって厳しくなる斜線
 ところが図4をみてください。敷地が真四角で図左側の方位のように真北であれば良いのですが右側の方位のように斜めに絡んでいますと敷地境界線を交差する斜め線上で検討することになりますので計算していかなければなりません。

 たとえば、第1種高度地区で境界線と真北が垂直であれば図2の説明ように、境界線垂直上5メートルの点から真南に向かって1メートル行くごとに0.6メートルずつ高くなっていくのですが、平面では図5のようになり境界線が東西方向であれば、1メートルはd点になります。

 しかし、境界線が南北線と45度つまり東北方向の場合はd点に該当する点はC線上のg点となり、結局境界線からの距離はAと短くなってしまうのです。さらに図6のように絡んでくる境界線は2面となるのです。このため屋根の軒先や軒高は制約を受ける範囲は建物の2面となるだけでなく、敷地に余裕が無ければ2階の室内空間まで斜めに削ることで対応することになります。

(4)敷地の高さとは?

 敷地の高さとは?・・・と聞かれて明確に答えられますか? 実は基準のGL(グランドライン)の設定方法でのトラブルも多いのです。

 一般的に建物から見た地盤面は建物の実際に建っている部分の平均地盤面と言うことになります。住宅の場合は図7のようになるのです(大きな建物の場合は単純ではなく、地下居室の緩和措置等と合わせて傾斜地のマンション建設で問題になっています)。


(5)道路斜線との関係は

 図7の場合、建物の絶対高さが10メートル算定の平均地盤面は、前面道路より高い位置のため、道路斜線が影響して建物の一部に斜線がかかります(図内赤斜線)。

 道路斜線は道路、町並みの通風、日当たりなどを目的に定められているとは言え、これでは道路と高低差の大きい敷地には建物が建たなくなってしまいます。そこで、図8のように敷地と道路の高低差Aから図上の計算後のB点からの斜線となります。

 また、道路の反対側が川や公園等の場合も図9のように前面に空間が十分あるとされ緩和されます。

●まとめ

(1)地鎮祭

・予算、日時、天気の対応等工務店にお任せした方が良い。
・式次第は直前に再確認する。
・鍬入れは大きく元気な声で「エイ!エイ!エイ!」

(2)縄張り

・設計士や工務店任せにしないで、必ず現場で確認、承認する。
・決めた結果は建物のある限り続くので、納得するまで経緯等説明をうける。

 →ここが重要

 傾斜地や敷地形状が複雑等の敷地で住まいを計画される場合は、早い段階で設計者と相談し、施主自身が問題点を正確に把握すること。


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