衝撃(しょうげき)の告白(こくはく)日記
「はぐき君のつらく悲(かな)しかった日々」



  みなさんこんにちは。ぼくは「はぐき」です。教科書(きょうかしょ)には「歯肉(しにく)」なんて書かれているけれど、「はぐき」と呼(よ)んでくれたほうがみんなすぐにわかってくれるみたいだから、そういうふうに呼んでください。ぼくのご主人様(しゅじんさま)の名前は「 君」といいます。小学校6年生です。

  ぼくはみんなの口の中で白い歯の「デンタ君」をとり囲(かこ)んで、歯を守っています。本当はとてもデリケートで、きれい好きです。でもぼくのご主人様は、ぼくが「デンタ君」の健康(けんこう)のためにどれだけ大事(だいじ)か、ぜんぜん気づいていなかったのです。

そのためつらいつらい毎日をすごしたこともありました。

ぼくのつらい日々をつづった日記を今日あえて公開(こうかい)します。みなさんの口の中の「はぐき」がつらい思いをしなくてもすむようにと願(ねが)いを込(こ)めて・・・・・。

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月7日

  この頃(ごろ)ぼくのご主人様は、スポーツ少年団とやらの練習(れんしゅう)に一生懸命(いっしょうけんめい)なんだ。少しは運動神経(うんどうしんけい)がいいみたいで、監督(かんとく)やコーチにおだてられたり、しかられたりしながら毎日のように練習しているよ。

  でも、ぼくが困(こま)っちゃうのは、じつは練習中の時なんだ。汗(あせ)をいっぱいかいて、のどや口の中がからからになってくると、ぼくは息苦(いきぐる)しくなってしまうんだよ。ご主人様は、時々水分を補給(ほきゅう)してくれるんだけど、じつはこれが水ではなくてスポーツドリンク。ご主人様は栄養分(えいようぶん)の吸収(きゅうしゅう)が速(はや)くて体に良いからと思っているみたいだけど、ぼくにとってはとてもつらいんだよね。ねばねばべとべとしてきもち悪(わる)いし、ぼくがガードしている「デンタ君」の上には「歯くそ」がいっぱいついてきて、中ではいろんなばい菌(きん)があばれだしちゃうし・・・・。ただの水を飲(の)んでもらったほうがありがたいなあ、といつも思っているんだ。

  試合(しあい)が近づいているので、今日は夜の練習もあって、ご主人様はいつもより相当(そうとう)お疲(つか)れのご様子(ようす)。でも、ぼくがうれしいのは、夜寝(ね)る前は必(かなら)歯みがきをして、歯にこびりついてるプラークのやつを退治(たいじ)してくれることなんだ。小さい時からの習慣(しゅうかん)で、必ず歯みがきをしてぼくのことをいたわってくれるんだ。練習帰(かえ)りにアンパンマン・・じゃなっかったアンパンを食べていたから、ぼくの周(まわ)りはあんこでべとべと。でも、もう少しのしんぼうだ。

 ・・・・ ご主人様はもうそろそろ寝(ね)る時間かな?トイレに行って手を洗(あら)ったし、さあいよいよ歯みがきだ。

 ・・・・・ あ、あれ?

  すぐに子供部屋(こどもべや)に入っちゃったよ。洗面台(せんめんだい)はあっちなのに。どうしたのかな?いつもの歯みがきは?今日はないの?あ〜あ、ついに寝ちゃったよ。バタン、キュー、って言うやつだね。相当疲(つか)れていたみたい。するとぼくはべとべとあんこといっしょに寝なきゃいけないのか。ちょっと甘すぎて吐(は)き気がしそうだけどがまんしようっと。




月8日

  夕べはご主人様が歯みがきをしないで寝(ね)てしまったもんだから、ぼくはほとんど眠(ねむ)れなかったよ。おまけにべとべとあんこがいっぱい口の中にあったもんだから、虫歯菌(きん)のミュータンスやニョロニョロばい菌が見たこともないような友だちをいっぱいつれてきて、ドンチャン騒(さわ)ぎだったよ。朝には歯くそがこんもりと盛(も)り上がっていたね。ばい菌の連中(れんちゅう)、ごちそうを食べるとすぐにウンチをたっぷりするから大嫌(だいきら)いなんだ。

  お、ご主人様ねむそうに目をこすりながら歯みがきをはじめるぞ。歯ブラシにみがき粉(こ)をつけて・・・、あ〜あ、あんなにたくさんつけちゃって。ちょっともったいない気もするけど、ぼくはさっぱりするからまあいいや。歯ブラシでこすられる時の快感(かいかん)といったらないね。いちばん幸(しあわ)せな時間だよ。「シャカ、シャカ、シャカ、シャッ」  あれ、・・・・

もうおしまい?

  まだこっちに歯くそがいっぱい(かく)れているのに。なになに?今日は朝練(あされん)があるから時間がないって?そういえばお父さんとお母さんが「早くしなさい」ってさっきからどなっているよ。




月13日

  今日は試合(しあい)があったんだ。ご主人様のチームは順調(じゅんちょう)に勝(か)ち進(すす)んで、見事(みごと)優勝(ゆうしょう)したみたい。ぼくのご主人様は、やっぱりとても上手(じょうず)なんだね。将来(しょうらい)はスポーツ選手になるのかな?保護者会(ほごしゃかい)の主催(しゅさい)で「優勝祝賀(しゅくが)会」が開かれたんだ。ご主人様はさっきから、ジュースを何杯(なんばい)もおかわりしているよ。いつもはお母さんが「あんまり飲んじゃだめ!」って言ってるのに。今日は優勝のごほうびなのかな?

  ぼくのご主人様は相当(そうとう)(つか)れていたみたいで、途中(とちゅう)で居眠(いねむ)りをしてしまったんだ。後はどうやって家に帰って、ベットに入ったかさっぱりわからなかったよ。そんなわけで今日も歯みがきをしてくれなかったんだ。今夜は口の中に焼肉(やきにく)のカスやら焼(や)きそばの切れ端(はし)やら、とにかくごちゃごちゃいっぱいで、ばい菌どもが今から大喜(おおよろこ)びだよ。

また今夜も眠(ねむ)れそうにないなあ・・・・。




月17日

今日は朝からぼくの体じゅうがはれぼったいんだ。

  なんかむずむずした感(かん)じ。鏡(かがみ)を見たら体じゅうが赤くなっているよ。3日前に鏡を見たときは薄(うす)いピンク色で、引き締(し)まっていたんだけど、どうして急(きゅう)にこんなになってしまったんだろう?そういえばきのうの夜もばい菌どもがドンチャン騒(さわ)をしていて、きもち悪(わる)い液(えき)を出していたなあ。あれはもしかしたら(どく)だったんじゃないだろうか。きっと、ぼくの体はばい菌どもの毒にやられてしまったんだ。ご主人様がぼくの変化(へんか)に気づいてくれれば良いんだけど。

  今日はいつものようにちゃんと歯みがきをしているぞ。よし、よし、その調子(ちょうし)。「シャカ、シャカ、シャカ、シャカ」あー、さっぱりした。これでむずがゆいのも治(なお)りそうだぞ。でも、あれ?ぼくの陰(かげ)に歯くそのやつがこっそり(かく)れてまだ残(のこ)っているや。ご主人様も気づいていないみたい。こいつ、ぼくと「デンタ君」の間のすき間に、こっそり入りこみやがった。

ずるがしこいやつめ。




月25日

 ぼくの後(うし)ろに隠(かく)れている歯くそのやつ、だんだん量(りょう)が増(ふ)えてきただけでなく、このごろ少しかたくなってざらざらしてきたみたい。色も茶色っぽくなって「歯石(しせき)」とかいう、溶岩(ようがん)みたいな石に変(か)わってきちゃったみたいだな。ぼくの背中(せなか)はいつもちくちくして、真っ赤に腫(は)れ上がってしまったよ。昨日(きのう)なんかはちょっと血が出てきたみたいだった。

  このごろは毎日がとてもゆううつなんだ。ご主人様はぼくがこんなに苦(くる)しんでいてもちっとも(いた)くないみたいで、あいかわらずぼくの陰(かげ)に隠(かく)れている歯くそに気づいていないし・・・・。ぼくは辛抱(しんぼう)強く耐(た)えるしかないのかなあ・・・・。




月3日

  今日の朝、大変(たいへん)な事が起(お)こったんだ。ご主人様がいつものように歯みがきをはじめたら、ぼくの赤く腫(は)れた背中(せなか)からドバーッとたくさんの血が出てきたんだ。ご主人様はびっくりしてしまって、すぐ歯みがきをやめてしまったんだ。男の子って血を見るのがとっても(こわ)いんだよね。そりゃもう大騒(おおさわ)ぎして大変(たいへん)だったよ。

  もっともっと歯みがきをしてくれたら、ぼくも気持ちがいいし、腫(は)れてる背中(せなか)も治(なお)ってきそうだったんだけど。一生懸命(いっしょうけんめい)うがいしてたけど、歯くそはいっぱいついたままだったよ。

 朝、血を見てこわかったから、夜の歯みがきは血が出たところに触(さわ)らないように、簡単(かんたん)に終(お)わっちゃったんだよ。歯石のやつ、ますます勢力(せいりょく)を広げていって、口じゅうの歯に移(うつ)っていったみたい。おまけに歯くそをいっぱいお供(とも)にしていばりちらしているんだ。

ばい菌どもなんか大喜(よろこ)びさ。

  ぼくは毎日しんぼう強く我慢(がまん)していたけど、そろそろもう限界(げんかい)かもしれない・・・・。ご主人様はあまりあてにならないし、誰(だれ)か助けてくれないかなあ・・・・・。




月5日

  昨日(きのう)の夜、ご主人様がとってもこわい夢(ゆめ)をみたんだ。
あれはたしか近所のラーメン屋さんだったような気がするけど、家族(かぞく)みんなでおいしいラーメンを食べていたんだ。

  ところが突然(とつぜん)ご主人様のラーメンのつゆがどんどん赤くなっていくんだ。あれ、おかしいなと思ってよく見ると、歯ぐきから出た血がラーメンを伝(つた)わって汁(しる)真っ赤にしていくんだ。ご主人様はびっくりして、一生懸命(いっしょうけんめい)うがいをするんだけれど、口の中があっという間に血でいっぱいになってしまうんだ。吐(は)き出しても吐き出しても、血がどんどん出てきて、何度目かに吐き出したときカランと音がして前歯が抜(ぬ)けて落ちてしまったんだ。

  それからは、どんどん歯がグラグラして吐き出すたびに歯がぼろぼろ抜けていくんだ。ご主人様は顔がまっさおになって気を失(うしな)いそうになったんだ。そしてついに最後(さいご)の歯が抜けちゃった時、やっと目がさめたんだ。体じゅうにべっとり汗をかいて、怖(こわ)くてがたがた震(ふる)えていたよ。

かわいそうだったなあ。




月7日

  今日は学校で歯科検診(しかけんしん)があったんだ。ご主人様はいつもよりすごくていねいに歯みがきをして学校に行ったよ。歯医者の先生が来て、検査(けんさ)が始(はじ)まった。みんな緊張(きんちょう)して順番(じゅんばん)が来るのを静(しず)かに待(ま)っていたんだ。あっ、 ちゃんの番になった。みんなにこっそり教えちゃうけど、 ちゃんってぼくのご主人様が好きな女の子なんだ。

  どれどれ、歯医者の先生が口の中をのぞきながらなんか言ってるよ。「6番、ケンゼン、5番、ケンゼン、ケンゼン、ケンゼン・・・・」あ、全部「ケンゼン」だ。「健全」って虫歯になっていない健康(けんこう)な歯のことだよね。きっと ちゃんは毎日ちゃんと歯みがきをしているんだろうな。ぼく ちゃんの「はぐき」になりたいよ。きっと毎日すっきり、さわやかに暮(く)らせると思うよ。
 さて、次はいよいよご主人様の番だ。あれ、大きく口を開(あ)けて準備(じゅんび)運動なんかしてるよ。

相当きんちょうしてるみたい。

  さあ、いよいよ始まるぞ。 君、先生の前で大きく口をあけました。「6番、シー2、5番、シー1、4番、シーオー、3番、シー1・・・・」なんだ?どうした?「ケンゼン」って1本もないぞ。全部虫歯なのかい?「下顎(かがく)3番、ケンゼン、2番、ケンゼン・・・」ああ、少し安心(あんしん)したよ。結局(けっきょく)ケンゼン歯は10本だけ。半分以上(いじょう)が虫歯だった。

  おや?まだ先生が何か言ってるぞ。「ジー」です。「ジー」ってもしや、歯肉炎(しにくえん)?あたりまえだよなあ。ぼくの後ろに隠(かく)れている歯石のやつはでこぼこの岩石みたいにどんどん大きくなるし、おかげでぼくは真っ赤に腫(は)れてもう死にかけている。血はどんどん出ちゃうし、それを怖(こわ)がってご主人様はほとんど歯をみがかなくなっちゃったんだから。

「歯医者に行きなさい」と、保健室(ほけんしつ)の先生にいわれて、「治療の勧(すす)」なんかもらってきちゃったみたい。




月10日

  あんなに歯医者に行くのを嫌(いや)がっていたご主人様がついに歯医者に行ったんだ。しかもお母さんに無理無理(むりむり)手を引かれながら。ようやく順番(じゅんばん)がきて、治療(ちりょう)台に座(すわ)ったご主人様はもう体がコチコチに緊張(きんちょう)してしまって、指(ゆび)がもう開(ひら)かなくなっちゃうんじゃないかと思うぐらい手をぎゅうっときつく握(にぎ)っていたよ。背中(せなか)にはべっとり汗(あせ)をかいていたし、なんて弱虫なんだ。われながら情(なさ)けないよ。

  歯医者の先生は「あ、これは歯肉炎になっちゃったね。虫歯もいっぱいあるけど、先に歯肉の治療をしなくちゃいけないね。今日は歯みがきの仕方(しかた)を衛生士(えいせいし)に指導(しどう)してもらおう。」と言って、さっさと隣(となり)の患者(かんじゃ)さんの所に行っちゃったんだ。かわりに来たのは、

ちょっと太目のお姉さん。

  衛生士さんっていうんだって。「 君、ぜんぜん歯をみがいてないんでしょう。今日は歯みがきの練習(れんしゅう)ね。」「歯ブラシはこういうふうに持(も)って・・・」それから30分も歯みがきの練習をしていたよ。おかげでぼくは、少しすっきり。気のせいか腫(は)れていたのも少しはよくなったみたい。

  帰(かえ)ってきたらご主人様また歯みがきしてたよ。そういえば衛生士(えいせいし)のお姉さんに「好きな子いるんでしょ。こんな歯ぐきじゃ口臭(こうしゅう)もするし、女の子にきらわれちゃうぞ。」なんていわれてたから。 ちゃんのこと考えてるんだな、きっと。ま、動機(どうき)はどうでも、一生懸命(いっしょうけんめい)みがいてくれるのはありがたいや。




月17日

  スポーツ少年団の練習(れんしゅう)で忙(いそが)しかったにもかかわらず、この1週間ご主人様は一生懸命(いっしょうけんめい)みがいてくれたんだ。おかげでぼくはややスマートになり、色もピンク色になってきたんだ。ばい菌どももあまりあばれなくなって夜もよく眠(ねむ)れるようになったんだ。

  今日も歯医者さんに来てるんだけど、衛生士のお姉さんが歯石をとってくれるんだって。なんか、カマみたいな道具で岩のような歯石を引っかいてとってくれたんだ。道具があたるとちょっと痛(いた)かったけど、歯石のやつが引きちぎられていった後はとっても気持(きも)ちよかったよ。これでぼくもきっと健康(けんこう)に暮(く)らせるようになると思うよ。




月19日

  ご主人様の家では犬を飼(か)っているんだ。

名前はモモ。

  今日はご主人様が学校から帰ったら、嫌(いや)がるモモの口をあかせて何かチェックしていた。「あれ、モモの口がなんか臭(くさ)いや。歯のまわりにぼくと同じ歯石がついて歯ぐきが赤くなってる。」なんてお母さんと話をしていた。

  さっそく獣医(じゅうい)さんに連(つ)れて行ったら「モモちゃんも歯肉炎(しにくえん)です。」って言われちゃったんだ。きっとご主人様と同じおやつを食べていたからだよね。しかもモモは今まで一度も歯をみがいたことがなかったから。獣医(じゅうい)さんもモモの歯石を取ってくれたんだ。「 君、たまにはモモちゃんの歯みがきをしてあげてね。」と、獣医(じゅうい)さんに言われてきたみたい。今日からモモの散歩(さんぽ)と歯みがきはご主人様がすることに決(き)まったんだ。




月25日

  最初(さいしょ)のころは歯みがきをすごくいやがっていたモモも、このごろはご主人様が歯ブラシを持(も)っていくとおとなしくみがかせるようになったんだ。なんかモモも気持ちよさそうだよ。「口臭(こうしゅう)もなくなったし、歯ぐきもピンク色になってきた。」ってご主人様が言ってた。

ペットも人間と同じなんだね。




月27日

  今日は日曜日なのに、朝からご主人様すごくていねいに歯みがきしているよ。鏡(かがみ)を見ながらぼくのことを指(ゆび)で押(お)してチェックしている。

「うん、だいじょうぶだ。」

なんて言っちゃって・・・。今日は何かあるのかなあ?
   「ピーン、ポーン」   あれ、誰(だれ)か来たぞ。
あ、 ちゃんだ。  ご主人様、モモを連(つ)れて一緒(いっしょ)に出かけていったよ。どうか楽しい1日になりますように・・・・・。






・・・・というわけで、みなさんも歯ぐき君がつらい思いをしないように、毎日ちゃんと歯みがきをしてくださいね。

歯みがきの仕方(しかた)は4時間目で勉強しようね。

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