歯を磨くと“血”が出ませんか?


 みなさんは、歯みがきをした時に“血”が出ることがありませんか?もし歯ぐきから血が出ることがあったら歯肉炎という病気になっているかもしれません。健康な歯肉はピンク色をして引き締まっていて、丈夫そうな感じがします。しかし歯肉炎になってしまうと歯ぐきの赤味が増し、見た感じが「プヨプヨ」と弱そうな感じになってしまいます。
 「シソーノーロー(歯槽膿漏)」ということばを聞いたことがあると思います。この病気は歯のまわりの歯ぐきから膿が出てきて、歯を支えている骨がだんだん溶かされていく病気です。病気が進むと次第に歯がグラグラしてきて、最後には歯が抜けてしまう怖い病気で、大人の人が歯を失ってしまう原因の半分がこの「シソーノーロー」なのです。そして、実は歯肉炎という病気は、怖いシソーノーローの初期の段階のことなのです。つまり、歯肉炎をほおっておくとだんだん病気が進み、のちのちシソーノーローで歯を失うことになってしまうのです。そんな大変なことにならないように、歯肉炎についてしっかり勉強して歯を大切にしましょう。
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【歯肉炎はどうして起こるのでしょう?】
 実は歯肉炎を引き起こす原因となるのも、虫歯と同じ歯垢なのです。特に歯と歯ぐきの境目に付く歯垢が歯肉炎を引き起こす大きな原因となります。歯と歯ぐきの境目には、健康な状態でも1〜2ミリぐらいの隙間があるのですがその隙間に歯垢が付着した状態が長く続くと、歯垢の中に住んでいる細菌が毒素を出して歯肉を刺激するのです。ここが虫歯ができる時とちょっと違いますが、歯肉炎を起こす菌は、ミュータンス菌とは違う種類のヘビのように長くてにょろにょろした細長い細菌だといわれています。
 歯磨きをきちんとせずに歯垢が付きっぱなしになった状態でいると、この細菌の出す毒素が歯肉に炎症を引き起こし、歯肉が腫れ上がって、歯と歯ぐきの境目の溝がますます深くなります。この溝のことを歯周ポケットと言います。歯ぐきは赤くぷくっと腫れたようになってしまい、歯ブラシがあたると血が出やすい状態になります。ある日歯を磨いている時に、突然血が出てきたらびっくりしますよね。歯肉炎が恐ろしいのは、病気が進んで血が出るようになってもぜんぜん痛まないということなのです。

 血が出てびっくりすると、また血が出ると大変だからと、なるべくそっと磨こうとするかもしれませんが、そのような歯磨きではますます病気が進んでしまいます。困ったことに歯垢はしばらく付きっぱなしの状態でいると、唾液中のカルシウムがくっついて、少しづつ硬くなっていくのです。こうして硬くなった物を「歯石」と呼んでいますが、歯石になってしまうともう歯ブラシでは取れないので、歯医者さんのお世話にならなければいけません。さらに病気が進むと今度は歯を支えている周りの骨(歯槽骨)が少しづつ溶かされてしまいます。ここまで進むと「シソーノーロー」という病気の段階になって、徐々に歯が動くようになり、最後は歯を抜かなければならなくなってしまうのです。

 歯垢が歯肉炎を引き起こす原因となる理由はわかっていただけたと思いますが、実は歯垢のほかにも歯肉炎の原因となるものがあります。
・全身の抵抗力・・・ビタミンやミネラルが不足して栄養状態が偏ったり、ストレスがたまったり、体が疲れたりすると抵抗力が弱まってしまい歯肉炎になりやすくなります。
・ホルモンの不調和・・・私たちの体の機能を調整するためにホルモンという物質が大事な働きをしていますが、そのバランスが崩れてしまうと歯肉に炎症がおきやすくなります。
・全身の病気・・・糖尿病などの病気は特に体の抵抗力を低下させてしまうので、歯肉炎が起こりやすくなります。鼻が悪くて口で呼吸することが多い人も歯肉の抵抗力が弱くなってしまいます。また特定の病気を治療するための薬が歯肉炎を起こすこともあります。
・歯並び・・・歯並びが悪くて特定の歯に強い力がかかりやすい状態の時は歯肉炎が起きやすくなります。また歯ぎしりをよくする場合も特に強い力がかかる歯は歯肉炎が起きやすくなります。
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【自分の歯肉を見てみよう】
 歯肉炎の原因が理解できたところで、自分の歯肉がどういう状態か口の中をよく観察してみましょう。用意するものは手鏡ひとつで十分です。
・チェックその1・・・歯肉の色・・・うすいピンク色なら大丈夫です。歯に近い部分に少し赤っぽいところがあれば危険です。
・チェックその2・・・歯肉の弾力・・・指で押してみましょう。引き締まってぴちぴちと弾力があれば大丈夫。なんかブヨブヨとしまりがないときは要注意です。
・チェックその3・・・歯肉の形・・・歯と歯の間にきれいな三角形の形で入り込んでいれば大丈夫。丸くふくらんで腫れているようなら、もう歯肉炎です。
・チェックその4・・・血は出ませんか?・・・歯と歯肉の境に少し出血があるようだったらもうアウトです。

【歯肉炎を予防するには・・・】
 歯肉炎は歯垢が原因で起こる場合がほとんどですから、毎日きれいに歯垢が取れていれば良いわけです。つまり虫歯予防の対策とほとんど同じなのです。
@毎日きちんと歯を磨くこと。これが一番大事なことなのです。予防はもちろん、歯肉炎になってしまった場合もていねいな歯ブラシを根気よく続けることで歯肉炎を治すことができます。上手な歯磨きの仕方については4時間目で勉強しましょう。
ほかに気をつけることは・・・
Aだらだらとおやつを食べないこと。
Bやわらかい食べ物は歯垢が付きやすいので、歯ごたえのある食事をしっかりかんで食べること。
C歯並びの悪い個所があるときは歯ブラシの当て方を工夫すること。
D栄養のバランスを考えて体の抵抗力を強くし健康を保つこと。

以上のことを実践し、歯肉炎やシソーノーローにならない健康な歯肉を保ちましょう。
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