虫歯はどうして出来るのでしょう


【虫歯はどうしてできるのでしょうか?】
 「歯はものすごくかたい」ということはみんなが知っていると思います。実は、人間の体の中で一番硬い組織なのです。「かたさ」だけで言えば、「歯」は鉄よりもかたいのです。水晶という石とほぼ同じ硬さを持っているのです。でも反面「もろい」という性質も持っています。硬いけれども割れやすい瀬戸物の茶碗のような物性に近いと考えてもらえばいいかと思います。
甘いものばかり食べてたり、歯みがきをしっかりやっていなかったりすると、鉄よりもかたいはずの「歯」もだんだんに表面が溶かされて穴があいてきてしまうのです。硬くて、じょうぶなはずの「歯」が、どうして虫歯になって穴があいてしまうのでしょうか。
 最近、空から酸性の雨が降ってくるのが問題になっています。「酸性雨」と呼ばれています。車の排気ガスや工場の煙突から出るけむりなどの中にふくまれている物質が大気の中にひろがり、雨にまじってふってくるのです。本来、水は中性ですが、大気中のいろいろな化学物質を含み酸性になってしまうのです。その雨によって森の木がかれたり、家の屋根のトタンが腐食し錆びたりするのです。
 実は、歯の表面も「酸」に溶かされて虫歯が出来ていくのです。甘いものばっかり食べてたり、食べた後に歯みがきをしなかったりすると、口の中でも「歯に酸性雨が降っている。」とたとえられるような現象が起きているのです
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【どういう仕組みで歯の表面が溶かされていくのでしょうか?】
 虫歯を作る原因となるのは甘いお菓子やジュースだけではないのです。
ご飯やおやつを食ぺたあと、歯の溝や歯と歯の間、歯と歯ぐきの境目には細かい「食べカス」がたくさん残ってしまいます。この「食ぺカス」がやがて歯垢というネバネバした汚れになってしまうのです。この歯垢が口の中にたくさんいる虫歯菌には最高の住みかなのです。そしてこの歯垢の中で、虫歯菌はせっせと「酸」をつくるのです。つまり、虫歯菌は口の中の「食べカス」をえさとして、「酸」という排泄物を作るのです。この「酸」が歯を溶かして、歯の表面に穴をあけてしまうのです。
「歯垢」を顕微鏡で見ると、中にはいろんな種類の細菌がウジャウジャいます。また、歯垢はとってもネバネバくして歯にくっつきやすく、水には溶けません。ですから「ブクブクうがい」だけでは取れないのです。歯垢を取るには「歯ブラシ」でこすり落とすのが一番確実な方法です。
 「ストレプトコッカスミュータンス」という名前を聞いたことがあるでしょうか?これが虫歯菌の名前なのです。他にも虫歯を作る菌がありますが、ミュータンス菌が代表格です。

  ミュータンス菌+砂糖や食べかす=歯垢→酸を作る→歯を溶かす

みんなのお腹の中に大腸菌がいっぱいいるのと同じように、誰でもミュータンス菌をはじめとする多くの細菌が口の中に必ずいるのです
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【虫歯はどのように進行するのでしょう?】
 虫歯になると冷たい物がしみたり、食べ物がつまって痛くなったりしますが、歯の中ではどのような変化が起こっているのでしょう?
むし歯は進み方の程度によって「Cl」・「C2」・「C3」・「C4」と4段階に分類されています。

・「Cl」と呼ばれてる段階=初期の虫歯
 「エナメル質」という歯の一番表面にある部分にむし歯ができた状態です。この段階ではまだ痛みを感じることはありません。歯を磨いた後に、唇をちょっとめくって前歯をよく見てください。歯茎の近くが白い帯状になって見える人はいないでしょうか?そういう人はC1という段階の虫歯になってしまっているかもしれません。みなさんが鏡を使って自分の口の中をのぞいてみてもなかなか見つけられないような、歯と歯のあいだにもよくできてることがあります。

・「C2」と呼ばれている段階=少しすすんだむし歯
 エナメル質の内側にある「象牙質」までむし歯が進んだ状態です。象牙質はエナメル質に比べると軟らかいため、エナメル質の内側で大きくむし歯が広がっていくことがあります。この象牙質には歯の神経に通じている細い管が無数に存在しています。そのため、ときどき甘いものや冷たい飲みものなどがしみて痛くなったりします。

・「C3」と呼ばれている段階=けっこう進んだむし歯
 象牙質をつきぬけて歯の中の神経までむし歯がとどいた状態です。冷たい物ばかりでなく、熱い飲み物などもしみて痛むようになります。食べ物がむし歯のあなの中に入ると「ズキッ」って痛くなったり、なにもしていない時にも「ズッキン・ズッキン・ズキーン」と痛みを感じてしまうようになります。象牙質の内側にある「歯髄(歯の中の神経)」という組織が炎症を起こしてしまうためです。

・「C4」と呼ばれている段階=歯の頭のなくなっちやったむし歯
 歯髄が死んで歯の根の先の方まで細菌が入りこんでしまった状態です。ほおっておくと、根の先の方に「ウミのフクロ」ができて顎や顔が腫れてしまったりすることもあります。

 最近の学校の歯科検診では[CO(シーオー)]と呼ばれる分類も使って検診することがあります。これは学校検診の時だけに使う記号で[要観察歯]と呼ばれており、歯と歯の間に虫歯があるかもしれないけれど、検診の場でははっきりと判別できない場合や、ごくごく初期の虫歯で、しっかり歯磨きすればこれ以上進まないと思われるような虫歯に対して使う記号です
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【自分の口の中の「歯垢」を調べてみましよう】
 「歯垢」は、どんな色をしていると思いますか?実は歯とほとんど同じ色をしているのです。ですから、なんとなく鏡を見ていても細かいところは見つけにくいのです。歯についている「歯垢」は「染め出し液」という液を塗ることにより、すぐに見つけられるようになります。一見きれいに磨けているように見えても、染め出してみるとプラークがたくさん付いていることが多いのです。


<「染め出し」の方法を紹介しましょう。>
用意するもの・・・染め出し剤、鏡、綿棒、歯ブラシ、コップ
1・染め出し剤を綿棒にしみこませて、鏡を見ながら歯の表面に塗ります。奥歯や歯の裏側・歯と歯肉の境目・歯と歯の間にもよく塗りましょう。
2・ブクブクうがいを2回する。歯の表面の赤く染まった所がプラークです。
3・鏡を使って赤く染まった場所をよく見てみましょう。どこが赤いか紙に記録すると良いですよ。 「歯垢」のつきやすい場所は主に次の場所です。
  その1:歯と歯のあいだ
  その2:歯と歯肉の境目
  その3:奥歯のかみ合わせ
4・鏡を見ながら赤いところを落とすように歯みがきをしてみましょう。
一所懸命磨いて赤くそまったプラークがなくなれば、きれいになった証拠です。
5・念のためもう一度染め出してみましょう(確認染め)。もしも赤く染まってしまうところがあったら、もう一度歯磨きをしてください
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【虫歯を作らないようにするにはどうすればいいのでしょうか?】
 虫歯が出来るには、歯と、ミュータンス菌と、食べ物(砂糖)が必要なのは今までの勉強で解っていただいたと思います。ところが虫歯が出来るにはまだ必要なものがあります。そのひとつはミュータンス菌が歯を溶かしてしまう酸を作るのに必要な時間です。そしてもうひとつ、私たちの毎日の生活の仕方(生活習慣)も虫歯の出来方に影響してくるのです。全部で五つの条件が相互に関係しているのです。これらはお互いに関連し、全ての条件が満たされた場合に虫歯になってしまうのです。

五つの条件についてそれぞれ対策を考えてみましょう。

<歯について>
@ 歯をなくす・・・歯があるから虫歯になるのです。総入れ歯のおじいちゃんは虫歯になる心配がないからいいのですが、まさか健康な歯を全部抜いてしまう訳にはいきません。
A 歯を強くする・・・虫歯菌に負けない丈夫な歯を作ればいいわけです。みなさんはフッ素という名前を聞いたことがありますか?この物質はお茶や海藻などにも含まれており、歯を強くする性質があります。フッ素を含んだうがい液で毎日うがいをしたり、歯医者さんで定期的に塗ってもらうことによって歯が虫歯になりにくくなるのです。最近はフッ素を含んだ歯みがき剤もありますので使ってみるといいですね。
B 虫歯が出来にくい歯の形にする・・・奥歯のかみ合わせの溝の部分は食べかすが残りやすくて虫歯になりやすい場所です。そこで虫歯になる前に溝を埋めてしまうという方法があります。シーラントという方法で、歯科医院で行われています。

<食べ物について>
@ 甘いものをなるべく食べない・・・チョコレートやジュースには砂糖がたくさん入っているのは知っていますね。甘い食べ物や飲み物をなるべく食べないようにし、食べるときは時間を決めて食べる、規則的な生活習慣が大切です。お菓子をぜんぜん食べてないからといって安心は出来ません。ごはんを食べても虫歯のもとが出来るので気をつけてください。
A 虫歯を作らない甘味料を利用する・・・キシリトールを知っていますか?虫歯を作らない糖分として、最近ガムやキャラメルに入っています。でもキシリトールの他に虫歯を作る糖分も一緒に入っている商品が多いので、いくら食べても大丈夫と安心してはいけません。
B 歯をきれいにする食べ物をたくさん食べる・・・野菜やくだものなど、繊維質を多く含む食べ物はそれらをかむだけで歯をきれいにする効果があります。毎日の食事に野菜をたくさん食べるようにしましょう。

<虫歯菌について>
@ 虫歯菌をなくす・・・虫歯菌を薬で殺してしまう方法が考えられます。でも毎日薬ばかり飲んでいては体によくありません。また本当に有効な薬があるのかもよく判らないので、あまり実用的な方法ではないと思われます。
A 虫歯菌の数を減らす・・・歯ブラシで虫歯菌をかき出してしまうという方法です。虫歯菌はプラークの中にたくさん潜んでいので、プラークと一緒にかき出せば口の中の菌が減ります。虫歯菌の数が減ると、作られる酸の量も少なくなるので、むし歯が出来にくくなるというわけです。

<時間の経過について>
@ 歯を溶かす酸ができる前に何とかする・・・おかしやごはんを食べたあと、酸ができるまでの間に少し時間がかかります。ですから、酸のもとになる食べかすをなるべく早く口の中からなくしてしまうことが必要です。歯が溶かされてしまう酸ができるまで3分ぐらいかかりますので、その間にブクブクうがいや歯磨きによって食べかすを取り除きましょう。何かを食べたらなるべく早く歯を磨くことが大切です。

<生活習慣について>
@ おやつの食べ方・・・お菓子をだらだらと食べながらテレビゲームに夢中になっているのが一番歯には悪いのです。おやつは時間を決めて規則的に食べるようにしましょう。
A スポーツと虫歯・・・毎日夜遅くまでスポーツ少年団の練習をしている子供達は、練習中のどがかわいた時にスポーツドリンクを飲むことが多いようですが、これが一番虫歯を作りやすくしているようです。のどがかわいたら水を飲みましょう。お金もかからないし、虫歯も出来きませんし、一番安上がりです。
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